新型コロナウイルスの感染拡大がビジネスにもたらした影響は多岐にわたるが、実感として分かりやすいのはやはりテレワークの浸透だろう。電車に揺られて出社し、一日の大半をオフィスで過ごすという、これまで“当たり前”だった働き方は、もはや当たり前のものではなくなった。企業は在宅ワークを推奨し、さまざまなITツールを駆使しながら、生産性を落とさずに業務を続けられる新しいワークスタイルを模索している。
その一方で、従来の“オフィス像”を再考する動きも活発化している。在宅勤務者の増加に伴うオフィスの縮小や移転、在宅で働きづらい従業員のためのサテライトオフィスやシェアオフィス、ワーケーションなどもその1つだ。また、オフィスに求められる設備も、ペーパーレス化が進んだ結果としてコピー機の必要性が下がる一方、従来の会議室にオンライン会議用のカメラやスピーカーが導入されるなど、新しい動きが生まれている。いずれにせよ、いつでもどこでも快適に働ける環境をどう作っていくかは、いま企業に求められている喫緊の課題の1つだ。
こうした状況のなか、同じフロアを複数の企業が共有するシェアオフィス(シェアードオフィス)も、オフィスの移転・縮小を検討する企業ニーズの高まりを感じているという。
会員制サテライトオフィス「ビジネスエアポート」を運営するライフ&ワークデザインの原口氏は、「オフィスの在り方が変わっているのだと思います。2020年は感染防止に対する社会的な動きに企業がどう対応するのかが問われた1年でした。その結果、オフィスとそれ以外の境目が流動的になり、ありとあらゆる場所が『働く場所』になっています。オフィスを分散するためにシェアオフィスを検討する企業もあります」と話す。
シェアオフィスの利用者といえば、弁護士や税理士などの士業、デザイン事務所などの比較的小規模な事業者、あるいはスタートアップ企業などを連想するが、実は企業規模や業態に関係なく利用されるケースが増えているという。フロア面積や部屋の大きさで契約するシェアオフィスの利点の1つは、事業の成長(とそれに伴う人員増)に素早く対応できる柔軟性にある。これがコロナ禍でオフィス機能を再検討している企業ニーズに合致したというわけだ。
例えば、デジタルマーケティング支援事業を行うtoBeマーケティングは、2人で創業した2015年からわずか5年で従業員数が100人規模に達し、その間に社員数増に対応するために5回もオフィスを移転していたが、20年にテレワーク制度を始めたことで従来のオフィスが不要になり、ビジネスエアポートの個室にオフィス機能を移したという。
ビジネスエアポートは、総合デベロッパーとして長い歴史を持つ東急不動産の事業として、国際空港のビジネスラウンジにいるような高級感のある内装と常駐のコンシェルジュによるサポートを強みとし、現在は都内を中心に15店舗を構えている。なかでも20年末にオープンした新宿3丁目店と、21年2月にオープンした田町店は、昨今オンラインミーティングのニーズが増えていることから一人用ブースを増やし、さらにこれまで短時間での利用を想定していたテレフォンブース(電話用スペース)を拡大する動きもあるという。
「今後シェアオフィスを運営する事業者が増えるなかで、何を差別化のポイントにするのかが肝になっていくと考えています。Web会議用のスペースとして使いたいというニーズに対応していくこともその1つでしょう。新宿3丁目店や田町店はこうしたトレンドを考慮したレイアウトにしていますが、従来の店舗も、例えば共用スペースでの密を避けるレイアウトにするなど、ニューノーマルに対応した形に変更しています」(原口氏)
また、前述したtoBeマーケティングの例も新たなニーズに応える上でのヒントになるかもしれない。同社はオフィスを移転した際、1人用の防音・遮音スペースとして活用していた「テレキューブ」をビジネスエアポート内の個室に持ち込んだそうだ。慢性的な会議室不足や、テレワークの常態化によって電話やWeb会議を行うことが増えたために導入していたものだが、シェアオフィスへの導入も特に問題はなかったという。
「最初に話を聞いたときは正直驚きました。まず考えたのが、フロアに入るかどうかです。ただ、重量やサイズ、安全装置(火災感知など)との関係などをビルの管理会社に確認したところ問題ないとのことだったので許可しました。テレキューブは分解・組み立てが可能でエレベーターによる運搬もでき、キャスターが付いているので導線に合わせたレイアウト変更も容易だったようです。条件はビルごとに異なるので既存店の全てで同様の対応ができるかどうかは確認する必要がありますが、デメリットはないのでご要望があれば応えていきたいと思います」(原口氏)
また、今回の件を受けて、共用スペースに防音性の高い一人用スペースを導入することも検討しているという。「個室の中にさらに個室を作るようなニーズがあることも把握していますし、音が気になる方にはパーティションやラウンジ、テレフォンブースの利用を勧めるなど折衷案で対応していますが、こういうソリューションもあるんだなと。今後の検討課題として情報収集をしているところです」(原口氏)
日本の働き方が大きく変わるなか、柔軟なワークスタイルを支えるサードプレースの1つとして、シェアオフィスを検討する企業は今後も増えるだろう。ウィズコロナ環境下におけるシェアオフィスの価値を今後どう作っていくのか。
ビジネスエアポートは、シェアオフィスとして単に場所を貸すのではなく、社内外の垣根を超えた「コラボレーションを生む場所」になることを目指してきた。原口氏は「これまでは共創をキーワードに、飲食などのリアルイベントを通じて偶発的なコミュニケーションや企業同士のマッチングを提供してきましたが、現在は代替策としてオンラインイベントを実施するなど、リアルとオンラインのハイブリッドで取り組んでいます」と話し、時代のニーズに合わせた価値を提供していくことが重要だと強調する。
「toBeマーケティングさまのテレキューブの件もそうですが、部屋の中に会議室をつけたいといった声や、ユニークなところでは靴をディスプレイしたいといったご要望をいただくこともあり、シェアオフィスの使い方はお客さまの数だけ存在します。そして、こうした幅広いニーズに柔軟に対応できることこそが、われわれが支持されてきた理由だと考えています。今後もお客さまの声を受け止めながら、働きやすいと感じていただける空間を提案していきたいと思います」(原口氏)
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提供:株式会社ブイキューブ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2021年3月14日