G20の記念品「博多織ネクタイ」開発の舞台裏 伝統的工芸品の商品開発に「V-CUBE」活用Web会議 「心の壁」の壊し方

» 2019年10月04日 10時00分 公開
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 鎌倉時代から続く伝統的工芸品でありながら、革新的な商品を次々と開発し、小売まで手掛けている企業がある。福岡県那珂川市に本社を置く、博多織をルーツとした「きもの制作所」のOKANO(株式会社岡野)だ。

 創業は1897年。以前は問屋にだけ商品を卸す、伝統的工芸品の典型的な取引形態だった。それが、現在の岡野博一代表取締役社長が就任後、呉服業界では珍しい製造と小売を同時に手掛ける業態に転換した。

 商品の開発から販売戦略まで考えるとなると、社内のさまざまな部署の間で、いかに情報が共有できるかが重要になる。そのためにOKANOはテレビ会議システム「V-CUBE Box」とWeb会議システム「V-CUBE ミーティング」をフル活用している。

 ITとは遠い存在のように思える伝統産業が、どのようにしてWeb会議を取り入れていったのか。岡野社長と、開発現場の担当者に話を聞いた。

phot OKANO(株式会社岡野)岡野博一代表取締役社長(写真はブイキューブ提供)

G20の記念品「博多織ネクタイ」を約2カ月で開発

 2019年6月8日・9日に福岡で開催された、G20財務大臣・中央銀行総裁サミット。主要各国の大臣や来賓に贈呈する記念品として選ばれたのが、OKANOが製作した博多織の製品だ。男性にはネクタイとポケットチーフ、女性にはポーチとストールのセットが贈られた。

phot 6月8日・9日に福岡で開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁サミットの出席者(写真は岡野提供)

 1241年から続く博多織は、国が指定する伝統的工芸品の中でも古い歴史を持っている。1600年に江戸幕府への献上品として選ばれたことから、当時から全国的に知られるようになった。独鈷と華皿という仏具を元に作られた文様は「献上柄」と呼ばれ、厄除けと浄化の意味があることから、現代でも空港や駅などの公共施設に文様が使われている。

 OKANOでは博多織を世界的なブランドに育てようと、着物だけでなく帯の生地を生かした名刺入れなど雑貨アイテムも多数開発している。G20の参加者に贈られたネクタイなどのデザインは、「献上柄」を独自にアレンジしたものだ。

phot G20の記念品として参加者に贈られたOKANOによる博多織の製品(写真は岡野提供)

 G20の記念品を、OKANOは驚くべきスピードで開発した。商品の企画を担当している日高しのぶさんによると、記念品の製作が決まったのは3月で、納品は5月下旬。約2カ月で質の高い、上品なデザインの製品を開発した。このスピードを可能にしているのが、テレビ会議やWeb会議の活用だという。

 「開発スピードが速いのは、生地が自社製品であることも要因の一つですが、製品の内容を決めていく時に、テレビ会議やWeb会議を開いて、実際に品物を見て確認していることが大きいです。その場で意見を出し合って、すぐに結論を出すので、意思決定に時間がかかりません」(日高しのぶさん)

phot 商品の企画を担当している日高しのぶさん

ビデオチャット導入に「手取り足取り」

 OKANOは本社と福岡市の商業施設「博多リバレイン」、東京都中央区の「GINZA SIX」の3カ所に店舗がある。さらに、全国の百貨店などの催事に年間約100回出展している。岡野社長は拠点が増えていくなかで、スムーズに情報共有ができる方法がないかと探った結果、「V-CUBE」の導入に至ったと話す。

 「小さな会社ですが、営業担当者が全国を飛び回っていますので、全社員が顔をそろえて打ち合わせる機会はほぼありません。会議をしようとすれば店舗を休まなければならず、丸1日分の売り上げが落ちてしまいます。さらに東京と福岡を往復すると、移動日をあわせると3日間潰れるうえに、旅費交通費も必要です。

 それ以外にも帳簿には現れないロスがかなりあります。経営者からすると、会議を1日開くだけで100万円くらいは失う感覚です。なんとかロスをなくしたいという思いでした」

 OKANOでは当初、電話とメールを使って情報共有を図っていたが、タイムラグや見落としも多く、うまくコミュニケーションが取れなかったという。そこで6年ほど前にまず導入したのが、無料ソフトによるビデオチャットだった。

 しかし伝統産業に携わる人の中には、PCを使うことに疎く、抵抗感がある人も多い。OKANOの山本裕子取締役管理部長は、導入当初は手厚い指導が必要だったと振り返る。

phot 山本裕子取締役管理部長

 「PCを使うのが苦手な人は、ビデオチャットを使うことに抵抗感があり、『手取り足取りレクチャーしてくれなければやらない』と言われました(笑)。そこで手取り足取り教えて、ここを押すだけでいいという説明をして、何度か自宅でもやってもらいました。

 すると、手厚く指導することによって、何とかできるようになりました。グループで映像を見ながら会議することで、電話で個別に話すよりも早いと感じたみたいです。動き出しさえすれば、抵抗はなくなっていきましたね」

無料ツールの限界感じ「本格導入」

 ビデオチャットの使い方を社内に浸透させてからは、役員会議や管理職会議に活用していた。ところが、映像や音声が安定しないことも多く、無料ツールを使うことの限界も感じたという。

 「ビデオチャットの時は5人くらいで、社内の拠点や自宅などを結んで会議をしていましたが、話しているうちに誰かがいなくなっているんですね。大事な場面でいなくなると、またその会話をやり直す必要がありました。こうしたことがたびたび起きて、困ったなというのが全員の共通認識でした」(山本取締役)

 そこでOKANOでは、有料のWebコミュニケーションツールを導入する検討を始めた。複数の製品を比較した結果、映像や音声が安定していることと、コスト面の優位性から、本社にはテレビ会議システムの「V-CUBE Box」を導入。それ以外の拠点を結ぶためと、外出先同士でやりとりをするためにWeb会議システムの「V-CUBE ミーティング」を導入した。

 その効果は大きかった。ビデオチャットを導入していた時でも、店長は月に1回本社に集まって会議をしていた。それが、「V-CUBE」で安定したやりとりができることから、店長会議もWeb会議に切り替えた。

 「PCやスマホでもコミュニケーションが取れるので、店長は会議の時間だけ店舗を抜ければよく、休む必要はなくなりました。導入に反対する人はいませんでしたね」(山本取締役)

商品開発と経営判断がスピードアップ

 「V-CUBE」の導入により、G20の記念品をわずか2カ月で開発できたように、商品開発のスピードアップにつながったという。実際に会議をどのように進めているのかを、山本取締役に具体的に聞いてみた。

 「本社の2階に広い部屋があるのですが、そこに各部署の担当者が集まって東京のスタッフとやりとりをすることが多いです。

 着物の場合は、着た姿を見せます。くるっと回ればどの角度からも確認できますし、柄を細かく見せたい時にはカメラに近づけます。たまにカメラに向けるのを忘れて、東京のスタッフから『こっちも向いてくれ』と言われることもありますが(笑)。

 ポーチなどの雑貨の場合は、正面から見た感じや、マチの広さ、タグの場所、ファスナーなどの細部を、実際に見せながら一つひとつ決めていきます。書画カメラも周辺機器として導入していますが、通常のカメラでも十分なクオリティーですね。画面を通してもすぐそばにあるかのように確認できます」

phot 山本さんと日高さんが製品を説明するV-CUBEの実際の画面

 以前は開発段階の製品を確認するためには、各拠点に現物を送らなければならなかった。そのため時間的なロスが生まれて、結果的に催事に出品する製品を当日まで見られないこともよくあったという。意思決定の早さは格段に違うと山本取締役は話す。

 「導入前は、決定に必要な人が9人いたとすると、全員がそろうことはなく、あの人にも見てもらわないといけないと言って、一つのことを決めるにも時間がかかっていました。見てもらって駄目だったらまたフィードバックが必要になりますので、2週間くらいは簡単にロスしていたと思います。

 導入後は全員が30分ほど時間をとって、ビデオやWebで会議をするケースが多くなりました。気軽に使えるようになると、電話で話をするのと変わらないような感覚です。これはたぶん社員全員が感じていると思います」

 岡野社長が判断しなければならない案件があった場合も、会社にいなくてもどこでも会議に参加できるようになった。岡野社長自身もメリットを感じているという。

 「Web会議によって、移動時間をうまく使えるようになりました。新幹線や飛行機の中では難しいですが、車なら停めればスマホで参加できます。外に出て仕事を取ってくるのも経営者の仕事ですので、車の中から会議に参加できるのは助かっています」

phot 本社と外出中の岡野社長の会議

Web会議の導入が「人材確保」にもつながる

 OKANOがテレビ会議とWeb会議を導入した背景を、効率化の面から見てきたが、岡野社長は他にも大きな目的があると言う。それは人材の確保だ。

 「伝統工芸は地元の材料を使ったり、地元で培ってきた技術を使ったりするのが基盤なので、基本は地産地消です。ただ人材だけは地産地消は難しいと思っています。優秀な人は全国に散らばっていますので、会社の周りにいる人とか、福岡にいる人だけで集めようとすると限界が出てきます。

 弊社は世界ブランドになることを目指しています。そのことを逆算して仕組みを作り、人を育てていくには、地元の人材だけというわけにはいきません。そこでWeb会議を活用して、東京の大手企業で働く会社員で兼業や副業をする方や、フリーランスの方と一緒に取り組むようになりました。彼らのように生産性が高い人は、ITのリテラシーが高く、業務をWeb上で終わらせる能力を持っています。こうした人材を確保するためには、われわれがインフラを整備しておく必要があるのです」

phot Web会議に参加する岡野社長

 OKANOでは現在副業のスタッフが3人いる。彼らが本業を終えた午後6時半や7時頃からWeb会議をすることが多いという。さらに、新卒採用の面接にもWeb会議を導入し、実際に採用につなげている。

ブランド価値共有の鍵はコミュニケーション

 博多織は2018年に伝来777年の節目を迎えた。岡野社長は博多織を「日本が誇るブランド」として世界に発信し、OKANOをエルメスやルイ・ヴィトンを超える世界ブランドにしたいと考えている。そのためにも、社員同士をつなぐ手段として今後も「V-CUBE」の活用を広げていきたいと話している。

 「私たちの高付加価値商品は、いきなりWebでクリックして、新規で買うことはありません。ファーストコンタクトは現品を目の前にして、納得して腑に落ちるところまでいかないと、顧客は購入するかどうか判断できないですよね。

 この過程を支えるのはやはり人です。テレビやWebを使った会議で社員同士がFace to Faceでつながり、店頭でもFace to Faceで顧客に説明する。製造現場から顧客に思いをつなげるためにも役に立つツールだと思います」

 また岡野社長は、インナーブランディングの重要性を痛感しているという。ブランドを作りあげる際には、まず社員がブランドを理解して愛さなければ広がっていかない。そのためにも「V-CUBE」によってコミュニケーションを深めていく考えだ。

 「例えば、それぞれの職場を24時間リアルタイムで見られるようにして、頑張っている人たちに『いいね!』をする機能などもあっていいと思っています。社内でブランドの哲学、コンセプト、ストーリーを共有するために、もっと活用できると思っています」

伝統は革新がないと生き残れない

 岡野社長は伝統的工芸品が長い歴史の中で生き残ってきたのは、「その時代のニーズにあわせて束ね直し、再構築を連続的にやってきたから」と話している。つまり、革新を続けてきたからこそ、伝統を維持できているという考え方だ。

 そう考えれば、伝統産業がテレビ会議やWeb会議などの新しい技術を取り入れて生産性を高めていくのは、当然の「あるべき姿」かもしれない。OKANOは「V-CUBE」を活用して、博多織の伝統を次の時代に発展させていこうとしている。

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提供:株式会社ブイキューブ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2019年10月22日

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