Connected Industries 〜マイクロソフトがもたらすつながる製造業の新たな価値〜

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製造業を直撃するデジタル変革の波、マイクロソフトが示す3つの方向性

第4次産業革命と呼ばれる変革の動きが広がりを見せる中、その直撃を受けると見られているのが製造業だ。グローバル競争が加速する中、既存製品の競争環境はますます厳しくなる。一方でシェアリングサービスなどによる「モノ」から「コト」へのビジネスモデル変革なども加速。大きな変化に対して製造業はどういう取り組みを進めるべきなのか。これらの動きを包括的に支えようとしているのが、マイクロソフトである。マイクロソフトが描く製造業の3つの変化の方向性とは何か。

日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 製造営業統括本部 統括本部長の赤田将之氏

製造業を取り巻く二重の苦しみ

 製造業を取り巻く環境は大きく変化しようとしている。既存製品におけるグローバル競争はより厳しくなる他、異業種からデジタル技術を武器に市場参入するディスラプター(既存産業の枠組みの創造的破壊者)なども数多く登場している。従来通りのやり方で従来製品を売るだけでは、売上高もシェアも右肩下がりになるような環境に置かれているといえる。

 一方で従来の日本の製造業を支えてきた「人の強さ」も、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少により、急速に衰えを見せ始めている。豊富な現場経験に裏付けられた高度なノウハウを持つ熟練作業者が定年を迎えて次々に退職する。一方で、中堅以下の作業者は層が薄く、技術の伝承がままならないという状況が生まれている。

 こうした二重苦の状況の中で、製造業には従来型のビジネスモデルにおける業務効率化や合理化をさらに加速させると共に、新たな付加価値の獲得が必要になっている。その具体的な動きの1つが、「モノ」の売り切りから継続的な「コト」売りへのビジネスモデル変革である。付加価値の源泉はデータ活用を前提とした、ハードウェアとソフトウェアの融合したソリューションの世界へと移行しつつある。例えば、自動車におけるモビリティサービスや、建設機械とICTを組み合わせて生産性の向上を図る「i-Construction」 、複合機の総合オフィスサービスなどである。

 これらの変革の波が押し寄せる中、製造業のデジタル変革を包括的に支援しようと取り組みを進めているのがマイクロソフトである。マイクロソフトの日本法人である日本マイクロソフトでは、製造業向けの活動方針として「革新的で安心して使っていただけるインテリジェントテクノロジーを通じて、日本の製造業のトランスフォーメーションならびに製造業のお客様のより良い顧客体験の実現に貢献する」という方針を掲げ、さまざまな取り組みを進めている。実際に、多くの製造業とパートナーシップを結び、協力してデジタル変革を推進しているのである。

マイクロソフトはユーザーのデータを勝手に使わない

 マイクロソフトが多くの製造業から支持を受ける理由の1つに「プラットフォーマーにならない」と宣言していることが挙げられる。「次世代の石油となり得るのはデータだ」といわれるほど、データが新たな価値の源泉として注目を集める状況である。そのため、多くのプラットフォーマーと呼ばれるIT企業が「データの吸い上げ」を狙い、協業などを進めている。ただ、多くの日本の製造業では自社のデータを勝手に使用されることに抵抗感を持っており、懸念を抱えていた状況だった。

 マイクロソフトでは「製造業がデジタル変革を行うためのテクノロジーインフラサービスの提供者となる」とし、あくまでも技術や技術基盤の提供者としての位置付けを守る姿勢を示す。つまり、マイクロソフト自体が勝手にユーザーのデータを使うことはないということを宣言しているわけである。

 日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 製造営業統括本部 統括本部長の赤田将之氏は「われわれはあくまでもテクノロジーの提供者としての役割を担います。“プラットフォーマー”といわれるような集めたデータを使ってビジネスを行うようなことはありません。ユーザーの変革をテクノロジー面で支援し続ける存在でありたいと考えます」とマイクロソフトが担う役割について述べている。

 ただ、マイクロソフト単独で、製造業のデジタル変革の全てを支えることは難しい。IoTやAI、製造現場のさまざまな知見など、求められる技術や知見が広範囲に及ぶからである。そこで重要になるのが「オープンイノベーション」である。マイクロソフトではさまざまなパートナーエコシステムを構築しており、このエコシステムを通じて製造業のデジタル変革を包括的に支援することが可能としている。

 「われわれがパートナーエコシステムを通じて最も期待しているのは、顧客同士のつながりの拡大です。パートナーエコシステムにより顧客固有のソリューションをコト化するのはもちろん、さまざまな顧客が作ったコトとコトを融合させることで、さらに新しい価値を生み出していく。そういう波及的な広がりに可能性を強く感じています」と赤田氏は語る。

 さらにマイクロソフトが日本の製造業に対し重視しているのが「人を中心とする」という点である。赤田氏は「日本の製造業の強みはやはり『人』を中心とした現場力にあります。デジタル変革というと、人の要素を排除するような風潮もありますが、マイクロソフトは人を中心とし人を支援するデジタル変革を提案していきます。これらの例として典型的なものが、HoloLens に代表される拡張現実 (MR: Mixed Reality )です。これらの人を支援するさまざまな技術を持つこともマイクロソフトの特徴です」と製造業における人の在り方について述べている。

人の作業を支援する取り組みの例

製造業がデジタル変革に取り組むための3つの指針

 それでは、マイクロソフトは、具体的にどんな方法によって日本の製造業の変革を支援していくのだろうか。

 3つの柱として挙げるのが、スマートファクトリーやスマートエンジニアリングを実現する「Factory of the future」、“コト”を提供するサービスソリューションを実現する「Product as a Service」、サプライチェーンマネジメントを抜本的に進化させる「Intelligent Supply Chain」である。それぞれの中身をもう少し詳しく掘り下げてみよう。

製造業の“コトづくり”をサポートする3つの取り組み
Factory of the future - スマート・エンジニアリング&スマートファクトリー

 「Factory of the future」はスマートファクトリーやエンジニアリングの進化など、従来の製造業としてのモノづくりを先進のデジタル技術で進化させる取り組みとなる。研究開発や製品設計の革新、コネクテッドオペレーションの実現、設備保全サービスの進化などをテーマとし、製造オペレーションの最適化やデジタルツインの実現などを目指す。これらを支える技術としてHPC(高パフォーマンスコンピューティング)やエッジコンピューティング、AI、ブロックチェーン、グラフテクノロジー、MRなどを積極的に活用していく。

 例えば、MR を実現するHoloLensでは、熟練技術者による遠隔からの現場作業支援、工場レイアウトや製品設置支援(空間プランニング)、工程作業やフィールドサービスの技能向上を目的としたトレーニング、3Dホログラムを用いた製品・設備の協調設計支援などでも活用が検討されている。

 「いかにハードルを下げてインテリジェントな工場やモノづくり現場を実現するかというのが重視している点です。多くの製造現場が直面している人手不足や若手技術者への技能伝承、働き方改革などの課題解決への貢献が期待されています」(赤田氏)。

Product as a Service – “コト”を提供するサービス・ソリューション

 「Product as a Service」は、まさに製造業が取り組む「モノ」から「コト」へのサービス化を実現する取り組みである。製品がIoT化するコネクテッドプロダクトやそれに伴って得られたデータを活用したサービス提供などを支援する。例えば、在庫最適化などを可能にするスマートプロビジョニング、計画保全などを実現するコネクテッドフィールドサービスなどが挙げられるだろう

 まさに製造業が目指す“コトづくり”のビジネスモデルの中核となるもので、今後に向けて市場の大きな発展が予想されている。

 マイクロソフトでは、既に「Product as a Service」の領域でも多くの製造業と協業を進めているが、新たに2019年3月に発表したのがオリンパスとの協業である。精密機器や医療機器のリーディングカンパニーであるオリンパスはデジタルトランスフォーメーションを推進する基盤としてMicrosoft Azureを活用することで「ICT-AI プラットフォーム」を構築した。

 各種センサーや非破壊検査用デバイスなどをクラウドへ常時接続することで、ソフトウェアのシームレスな更新、大量データのバックアップ、データの可視化を実現。将来的には共同作業や予兆保全、データの保護も視野に入れた「OLYMPUS Scientific Cloud」を構築するという。さらに、工業用内視鏡で撮影したジェットエンジンの内部画像をディープラーニングで学習して損傷の有無や損傷箇所を自動検知するプロジェクト、手術効率の向上と専門医療の高度化を実現する遠隔医療支援ソリューションの構築も進行中である。

Intelligent Supply Chain -参加者をつなぎ、意思決定を進めるサプライチェーンマネージメント

 「Intelligent Supply Chain」は、中央制御塔として設計パートナーや生産パートナーとの連携を担うもので、IoTやAIなどの先進技術を活用することで、複雑化するサプライチェーンの課題を解決する。これにより、各製品の個品管理が行えるようになり、トレーサビリティーの確保も行える。製造業やサプライヤー、物流業、小売業など、クロスインダストリーでサプライチェーンの可視化や情報の一元化を実現することを描いている。

 これらに関連してマイクロソフトが提案するのが、「製造業としてのマイクロソフト」の知見を活用した「Supply Chain Visibility」である。「Supply Chain Visibility」は、サプライチェーン可視化ソリューション導入支援サービスで、マイクロソフトが「Surface」で実践しているサプライチェーン管理をベースにしたソリューションである。サプライヤーからの調達、製造、在庫、物流に至るプロセスをエンドツーエンドで結び、リアルタイムなデータ分析を実現するためのコンサルティングサービスとなっている。将来的には製造プロセスの最適化や新ビジネスモデルの創出、他社と差別化したブランディングなども支援するデジタルアドバイザリーサービスを合わせて提供する計画だとしている。

3つの指針で生まれる価値をハノーバーメッセで具体的に表現

 マイクロソフトが推進する3つの指針を具体的な形で表現したのが、ドイツのハノーバーで開催された「ハノーバーメッセ2019(2019年4月1〜5日、ドイツ・ハノーバーメッセ)」での展示である。ハノーバーメッセは産業関連技術を紹介するB2Bの総合展示会で、ここ数年はドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」の進捗確認の場となっている。マイクロソフトでは、2019年は「Intelligent Manufacturing」をテーマにデジタルトランスフォーメーションの価値などを訴求した。

ハノーバーメッセ2019のマイクロソフトブース

 「Factory of the future」の面で、大きな発表となったのが、BMWグループとのスマートファクトリー領域での協業である。スマートファクトリープラットフォームである「Open Manufacturing Platform(OMP)」を設立し、マイクロソフトとBMWグループが協力して新たな製造プラットフォームとして普及させていく考えを明らかにしている。まず初期パートナーとして4〜6社を募り運営を開始し、2019年末までにユースケースが最低15件展開されることを見込む。

 マイクロソフトブース内ではパートナー企業やユーザー企業などがそれぞれのソリューションや事例を出展。特に注目を集めたのが、豊田自動織機 トヨタL&Fカンパニー(以下、トヨタL&F)のフォークリフトの自律作業である。これは自動走行とフォークでの荷物の運搬を自律的に行うというもので、強化学習AIの「Bonsai」を活用したという点がポイントだ。3次元の動きを深層強化学習により実現した。

トヨタL&Fの自律作業フォークリフト

 また、日本企業では日立ソリューションズが出展し、フィールドサービス向けのソリューションである「IoT Service Hub」と「フィールド業務情報共有システム」を紹介。フィールドサービス業務の負荷低減と高度化を両立させることを訴えた。

 一方、「Product as a Service」としてソリューションを発展させたのが、2018年も出展したスイスのBUHLERである。2019年は選別機などのデジタル化によりエッジ側で得られたデータを中心に、「食の安全」を価値として提供する「モノ」から「コト」へのビジネス変革へと進化させたことを紹介した。

 また、インダストリー4.0などスマートファクトリー領域で標準的な通信規格となりつつある「OPC UA」について、積極的なサポートを示す姿勢も示した。マイクロソフトとして新たに開発したOPC UA関連のソフトウェアをGitHubを通じて公開する取り組みなども紹介した。3つの指針を具体的な事例として紹介した他、これらをつなぎ合わせる技術の価値を訴求し、「テクノロジーインフラ」としての役割を強調した。

3つの指針の融合で生み出される価値

 マイクロソフトではこれらの3つの指針に基づいた取り組みをそれぞれの領域で進めていくとともに、これらを組み合わせ、さらに産業をまたぐ形で連携させ、クロスインダストリーでの新たな価値創出を推進する方針である。「従来の業種や職種などの枠を超えた変革の動きが進む中で、デジタルを共通項にさまざまな産業同士がつながることができるようになる。こうしたつながりの中で新たな“コト”を生み出すことができる」(赤田氏)。

 さらに「日本の製造業がグローバルでの競争を進めていく中で、パートナーとして支えていくのが、日本マイクロソフトの役割だと考えている。日本の品質や技術力を生かしつつ、デジタルの新たな価値を加えて、さらに世界をリードする存在となれるようにサポートしていく」と赤田氏は日本の製造業と共に歩む姿勢を強調している。

クロスインダストリーでのデジタル変革基盤に
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