デジタルによる変革は「不可避」。いま企業のリーダーたちに求められる姿勢とはIT Leaders xChange サミット 2018 Springレポート

2018年2月20日、日本マイクロソフト主催による、企業のITリーダー向けのイベント「IT Leaders xChange サミット 2018 Spring」が開催された。さまざまな企業や組織の事例から、現在のデジタル変革の最前線を追う。

» 2018年03月26日 10時00分 公開
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 2018年2月20日、日本マイクロソフト主催の「IT Leaders xChange サミット 2018 Spring」が開催された。実践の時代に入ったデジタルトランスフォーメーションは、企業の将来を左右する重要な経営課題になろうとしている。変革はどのように進め、誰が主導すべきなのか。成功に向けた戦略や提言、実践的な事例が紹介された。

重みを増す「デジタル変革なき経営は後退」という言葉

三井住友フィナンシャルグループ 取締役 執行役専務 グループCIO 谷崎 勝教 氏

 オープニングセッションで登壇したのは、IT Leaders xChangeの会長を務める三井住友フィナンシャルグループ 取締役 執行役専務 グループCIO 谷崎勝教氏だ。同氏が1年半前に日本マイクロソフトの代表取締役 社長 平野拓也氏との対談で語った「デジタル変革なき経営は後退」という言葉は、今や多くの企業にとって重要な提言となっている。

 谷崎氏によると、三井住友フィナンシャルグループでは、中期経営計画に「デジタライゼーション」の実現を掲げ、顧客体験価値の向上や生産性の向上、データの利活用などに生かす取り組みを進めている。AIの領域ではマイクロソフトと協働で、Microsoft Azure上で稼働するコンタクトセンター用のチャットボットを開発した取り組みについても紹介した。

 最後に、ユーザーの一代表として、今後もマイクロソフトの製品を徹底的に使いこなしていきたいと抱負を語った。

IoTで建設現場の働き方を革新する「スマートコンストラクション」

コマツ スマートコンストラクション推進本部 システム開発部 部長 赤沼 浩樹 氏

 最初の事例セッションでは、IoTを駆使して建設現場の革新に取り組むコマツのスマートコンストラクション推進本部 システム開発部 部長を務める赤沼浩樹氏が登壇、「コマツのIoTへの取り組み "スマートコンストラクション"について」と題して講演した。

 建設機械(建機)にICTを活用することで建設施工の自動化、効率化に取り組んできたコマツ。IoTという言葉が一般的になる前から、建機にセンサーを取り付け、稼働管理の仕組みを構築してきた先進企業だ。現在では、従来のICT建機による施工の効率化にとどまらず、前工程や後工程も含む施工全体を一元的に捉え、全体最適の視点で建設現場の安全性、生産性、品質の向上を実現する取り組みを進めている。

 この取り組みを推進するために、コマツが提供しているのが、ドローンや3D解析、クラウド/エッジコンピューティングなど最先端の技術を駆使し、建設現場の見える化や最適化を実現する施工ソリューション「スマートコンストラクション」である。これを使って、測量から設計、施工、保守までの建設プロセス全体を3Dデータでつなぐことにより、人、機械、土(量や形状)などの状況を見える化し、プロセス全体を最適化することが可能になる。

建設生産プロセスを3次元データ(+時間)でつなぎ、全てのプロセスを見える化して最適化する「スマートコンストラクション」

 スマートコンストラクションでは、工事が完成したときのイメージが3次元データで見られるようになる。今後は、刻々と変化する現場の状況(3D地形など)を日々測量し、見える化すること。そして、現場に関与する全ての人、機械、材料、サプライヤーなどの仕事量も日々見える化することだという。

 コマツではこうした課題の解決に向け、日々発生する大量の3Dデータなどをクラウドに送る前に現場で高速に処理するエッジコンピューター「Edge Box」を開発し近日中にLANDLOG社より提供可能となる。

 LANDLOG社は、建設現場で発生するさまざまなデータを集め、「コト」化をするオープンプラットフォーム「LANDLOG」提供のために、2017年10月にコマツ、NTTドコモ、SAPジャパン、オプティムの4社で設立された。

 現在、ドローンを使って現場全体の地形変化を日々計測するシステムや、動画カメラを使って現場で動く全ての建機やダンプトラックなどの動線や作業内容をリアルタイムで解析して見える化し、効率的で安全な施工を支援するシステムの開発にも着手しており、こちらも近日中のLANDLOG社からの提供を予定している。

設計、開発から配送、管理まで全てを革新した、Jabilの未来のデジタル工場

Jabil Green Point Div. Vice President & CIO May Yap 氏

 2つ目の事例セッションに登壇したのは、製造、設計エンジニアリング事業を世界規模で展開するJabilのGreen Point部門でVice PresidentとCIOを務めるMay Yap氏だ。「Manufacturing at the Speed of Digital(デジタルにより加速する製造業)」と題して講演を行った

 世界最先端の技術力を持つ製造ソリューション企業への進化をゴールに掲げるJabilでは、発案から設計、計画、開発、配送、管理までのソリューションをエンドツーエンドで提供しており、その適用分野は、スマートフォンや自動車、医療機器などの産業分野や多様なビジネス分野まで多岐にわたっている。同社はそのゴールの達成に向けて、顧客やパートナーを巻き込みながらデジタルトランスフォーメーションの最前線に立っている。

 Yap氏は、デジタルトランスフォーメーションの取り組み状況についてこう語る。「顧客を取り巻く環境は大きく変化し、さらに加速しつつある。そうした変化のスピードに顧客が対応しているように、われわれ自身も変革する必要がある。幸いなことにテクノロジーの進化は変革を容易にし、われわれもデジタルにより変革が加速化している」

 しかし、デジタルトランスフォーメーションは、IT部門単独では実現することはできない。Yap氏は、「仕事のやり方を変え、人や組織全体が変わらなければ真の変革は実現できない」と強調する。こうしたゴールを達成するために不可欠になるのが、変革の取り組み全体を管理したり、それを主導するリーダーを配置したりするなどの、適切な「チェンジ・マネジメント」である。

 実際に、Jabilはどのようなやり方でデジタルトランスフォーメーションを実践しているのか。同社が最初に取り組んだのは社内変革の基盤となる「デジタルエンタープライズ」をクラウドベースで構築することだった。この基盤は、以下の3つにより構成される。

  • 社員同士のコラボレーションやナレッジの共有、プロダクティビティ向上を実現する「デジタルワークスペース」、
  • 基幹業務のリアルタイム統合やプロセスの自動化、実用的な分析を実現する「デジタルバックオフィス」
  • 工場を刷新し、工場間の連携や高度なエッジ解析、共通アプリケションレイヤーなどの環境を整備した「デジタルファクトリー」

 デジタルファクトリーに関しては、製造の在り方を変えるインダストリー4.0を実現するための基盤として位置付けており、モビリティやロボティクス、人工知能(AI)、コネクティビティなど最先端の技術や方式を駆使して工場の自動化・効率化を実現する。Jabilはすでにマイクロソフトと協力して、デジタルファクトリー側で、店舗の売れ行き情報を予測して生産計画に反映させることができる店舗分析ソリューションを開発している。

 「われわれが目指しているのは、未来のデジタル工場であり、これによって製造のやり方が根本から変わると考えている。これを実現するためには強力なパートナーシップも不可欠だが、すでにわれわれはその基盤を確立している」とYap氏は力を込めて語った。

人口130万人のエストニアがなぜデジタル先進国になれたのか

エストニア共和国大使館 エンタープライズ・エストニア 日本支局長 山口 功作 氏

 最後の事例セッションでは、国家レベルでデジタルトランスフォーメーションに取り組むエストニア共和国の在日大使館でエンタープライズ・エストニア 日本支局長を務める山口功作氏が「デジタル社会の未来を垣間見る」と題して講演した。

 日本の九州とほぼ同じ国土面積に130万人の人口を抱えるエストニア共和国。同国は、欧州委員会のEUデジタル経済・社会指標(公共サービス)で1位、OECDの財務競争力で1位を獲得するなど、電子行政サービスの先進国として世界の国々から注目されている。

 エストニアでは、国民の99%がIDカードを保有し、健康保険や年金、投票、印鑑証明といった公的サービスをはじめ、会員カードや処方箋、定期券などの民間のサービスを含めて、2000以上のサービスをインターネットで利用することができる。現在、公的サービスのうちインターネットで利用できないのは、立会人を必要とする結婚と離婚、公証人を必要とする不動産売買だけだが、開発中の電子公証人システムが完成すれば、不動産売買もインターネットで行うことが可能になるという。

エストニア共和国の政府が提供する主な電子サービス

 エストニアは国家レベルでのデジタルトランスフォーメーションをなぜ実現することができたのか。山口氏は、その理由の一つとして政府トップのリーダーシップを挙げる。「エストニアは1991年に独立を回復したが、首都タリンに人口が集中していたため、役所や公的機関がそれぞれの地方都市に通常の窓口を設けて、ユニバーサルサービスを提供することは困難だった。そうした状況の中、前大統領の強いリーダーシップの下で、行政サービスの全面的なデジタル化に取り組むことになった」と山口氏は話す。ちなみに、前大統領はITエンジニア出身であり、プログラムミングもできたという。

 デジタルトランスフォーメーションを実現できたもう一つの理由は、デジタル化の考え方を深く検討し、守るべき原則を定めたことだ。1つ目は、国民から1度聞いたデータと同じデータを2度聞いてはならない「ワンスオンリー」の原則。2つ目は、加速度的に進む技術革新に対応するために同じ基本システムを12年以上使ってはならない「ノー・レガシ」の原則。3つ目は、証明書やデータはあくまでもデジタルが"正"であり、紙は"副"(コピー)である「デジタル・ファースト」の原則である。

 エストニアでは、デジタル化の取り組みによって、実際にどのような効果を得たのだろうか。例えば、電子署名ではGDP換算で年間2%の行政コストを削減、警察では検挙率を1.5倍にアップ、病院では患者の待ち時間を3分の1に短縮、徴税効率では世界一を達成、選挙では関連費用を5分の2に縮小した。

 しかし、山口氏は、「こうした効果は、単にサービスを電子化しただけでは得ることはできない。電子化にはイニシャルコストが必要になることを忘れてはならない」と忠告する。そのうえで、「重要なのはサービスをどのように統合化するかであり、それによってコストや人員の削減といった多くの効果を生み出すことが可能になる」とアドバイスする。

 企業や組織はどのような姿勢でデジタルトランスフォーメーションに取り組むべきなのか。山口氏は、「われわれが向かおうとしているデジタル社会にはあらかじめ決められた道はなく、自身の手で切り開いていく必要がある。道はわれわれが進んだ後ろに自然とでき上がるものであり、みなさんには開拓者の精神を持って取り組んでほしい」とエールを送った。

デジタルトランスフォーメーションを加速する日本マイクロソフトの支援策

日本マイクロソフト 代表取締役 社長 平野 拓也 氏

 クロージングセッションには、日本マイクロソフトの代表取締役 社長 平野拓也氏が登壇し、企業のデジタルトランスフォーメーションを推進する2つの支援策を紹介した。

 1つ目は、個人や組織に焦点を当て、そのポテンシャルを最大限に引き出す「働き方改革」だ。クラウドを基盤にAIやMRなど最先端技術を有効活用することにより、デジタルトランスフォーメーションを提案、支援する。

 2つ目は、業種や業態に合わせてデジタルトランスフォーメーションを提案、支援する「インダストリーイノベーション」である。業種、業態に最適なクラウドベースのソリューションをユーザーやパートナーと連携して開発し提供する。

 今後のデジタルトランスフォーメーションの推進に向けて平野氏は、「要素技術を理解したうえで、お客さまのビジネスに合わせてデザインを行うデジタルアーキテクトを育成するほか、お客さまとパートナーさまを引き合わせる各種イベントを開催、特定のテクノロジーやソリューションに特化した各種コミュニティを創設するなど、さまざまな支援策を実施していく」と締めくくった。

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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2018年4月25日