デジタル変革の最初の一歩を、企業はどうやって踏み出しているのか?

デジタル技術によるビジネス刷新に取り組むことがあらゆる産業で強く求められている。その切り札として近年、大きな話題を集めているのがIoTやAIだが、活用までの道のりは決して平坦ではない。そうした中、企業はどうすべきなのか。ITmedia ビジネスオンライン編集部が3月1日に開催したセミナーでは、KDDIとソラコムにより具体的な道筋が示された。

» 2018年03月30日 10時00分 公開
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デジタル変革の“あり方”とは

 急速に進む技術革新を背景に産業界には今、“創造”と“破壊”の2つの大波が同時に押し寄せている。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などを活用した、従来とは一線を画す新ビジネスの創出と、そのことに起因する既存の産業構造を覆す創造的破壊がそれである。

 その対応に向けた肝となるのが、新技術をビジネス刷新に結び付ける、いわゆるデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)だ。ただし、デジタル変革は多くの企業にとって初の経験であり戸惑う企業も多い。

 では、果たして企業はどうデジタル変革を進めていけばよいのか。ITmedia ビジネスオンライン編集部は3月1日、その点に焦点を絞ったセミナー「デジタル変革に向けた『伴走』そして、新たな顧客価値のための『共創」へ」を開催。セッションではKDDIが同社のデジタル変革に向けた取り組みを、ソラコムがデジタル変革に活用を見込める同社の無線通信プラットフォーム「SORACOM」を、それぞれ事例を交えつつ披露した。

顧客を支えるプラットフォームカンパニーに

 KDDIがデジタル変革に着手した最大の理由。それは、携帯電話市場が成熟期を迎える中、競合他社との競争が質的に大きな転換点を迎えたことにあった。

KDDI ソリューション事業企画本部長 兼 クラウドサービス企画部長の藤井彰人氏 KDDI ソリューション事業企画本部長 兼 クラウドサービス企画部長の藤井彰人氏

 KDDIでソリューション事業企画本部長 兼 クラウドサービス企画部長を務める藤井彰人氏は「いまやスマートフォンは日々の暮らしにおいて切っても切り離せない存在であり、通信はあらゆる生活シーンに深く根付いています。KDDIは、このつながり、お客さまとの深い接点を大切にしながら、もっと快適な暮らしを支える存在になりたいと考えました」と力を込める。

 現にKDDIは2016年に「ライフデザイン企業への変革」を宣言し、通信以外の領域でのサービスを拡充。加えて、そうした変革を実現するためにさまざまな企業と協業、共創して、新たなビジネス価値の創出に取り組んでいる。目指すのは顧客のビジネスに貢献するビジネスパートナーとなることであり、そのためにデバイスから分析、コンサルティングまでをワンストップで提供するプラットフォームサービスを確立しようとしている。

 藤井氏によると、これからのビジネス開発には、(1)小さく速く始めて、(2)失敗したらすぐに見直し、時には捨てて、(3)成功したら大きく育てるという、このスプリントをいかに早く回すことができるかが成功のカギだという。

 しかし、これらを実施するには1社だけでは難しいため、ビジネスプラットフォーマーを活用し、スモールスタートかつ失敗してもすぐに見直せるように従量課金制のサービスを活用したり、小さく速く、また進化し続けるためのサービス企画・開発手法が必要だったりする。

 「デジタル変革によってビジネスを高速に進化させるためには、1社だけで実現しようとしても困難です。そこでKDDIはそうした課題を持つお客さまのデジタル変革を支えるプラットフォームカンパニーとして役割を果たしていくのです」(藤井氏)

意識を変え、企画・開発プロセスを刷新する「Scrum」

 では、そうしたプラットフォームカンパニーとして、具体的にKDDIはどのようなことに取り組んでいるのだろうか。

 「通信とクラウド、IoTなどの境界線が薄れ、アマゾンといった新興プレーヤーとの競争は激化する一方です。そこで勝ち抜くには短期間で顧客価値の高い、しかも多様なITを組み込んだソリューションの一貫提供が鍵を握るでしょう。そのためにも既存の企画・開発プロセスの根本からの見直しに当社も迫られていたのです」と、KDDIのソリューション事業企画本部 クラウドサービス企画部 統括グループでグループリーダーを務める荒本実氏は振り返る。

 その克服に向けて着目したのがアジャイル開発手法の「Scrum」だ。同社では従来、いわゆるウォーターフォール型での開発手法を採用。そのことが企画と開発などの組織間での目指すゴールに対する考えのかい離を生み、開発期間の長期化や新たなテクノロジーに挑戦するイノベーションへの阻害などを招いていた。

KDDI ソリューション事業企画本部 クラウドサービス企画部 統括グループ グループリーダーの荒本実氏 KDDI ソリューション事業企画本部 クラウドサービス企画部 統括グループ グループリーダーの荒本実氏

 対してScrumでは機能要件に顧客価値に基づいた優先順位を付け、メンバー同士が互いに確認しつつ、短期間での小規模開発を繰り返すことで、考えの“溝”を埋める効果も見込まれた。そこで掲げた同社の具体的な目標は、(1)サービスリリース期間の抜本短縮、(2)共通目標の達成に向けたチーム一丸となった開発の実現、(3)技術力の向上を通じたサービスの顧客価値高度化、の3つだった。

 企画や開発メンバー全員が協働する場の整備を皮切りに、以後、プロジェクト単位の人月一括発注から、社員を含めたサービス単位の継続的なチームを編成し、プロジェクト単位からチーム単位への予算割り当て手法の見直しと段階的に変革を推進。併せて社員や協力会社を問わず、チーム全員がフラットに協働するよう働き方を見直し、意識の差も埋めていった。

 「結果、不必要な開発が抑えられ、また、“より良いサービス”が新たな共通目標となりました。さらに、従来はプロジェクト管理スキルに重きを置いていた当社の社員が実際に手を動かした開発業務に当たるようになることで技術スキルやモチベーションも向上するなど、Scrumの導入で当初予想以上の成果を上げられているのです」(荒本氏)

 もっとも、Scrumは「約20ページに収まるほど方法論は簡潔」(荒本氏)な反面、メンバーやマネジメントの意識や組織の変革が必要であるため習熟するには困難が伴う。その点を踏まえ、KDDIでは自社へ導入した経験で得た知見を基にScrum導入の支援サービスに着手。既に複数の顧客で実績を上げているという。

潜在ニーズを先端技術で発掘する

 競争環境の変化はKDDIの営業活動にも大きな変化を迫っている。「ソリューションの構成要素の多様化と成熟化によって、潜在ニーズの発掘までさかのぼらなければ売り上げ拡大が困難になっています」と語るのは、KDDIのソリューション営業本部 営業企画部で副部長を務める石井健太郎氏だ。

KDDI ソリューション営業本部 営業企画部 副部長の石井健太郎氏 KDDI ソリューション営業本部 営業企画部 副部長の石井健太郎氏

 こうした変化に対応し、同社ではヒアリングのために顧客企業を何度も訪問し、そこで拾い上げたニーズを基に協力会社と協働して試作品を開発。PoC(Proof of Concept)での顧客からのフィードバックを踏まえ、商品を仕上げるまでのプロセスを営業部門が担うまでになった。

 そうした中、同社の営業部門で現在、特に注力しているのが、人手不足の問題を抱え、またIT化も総じて遅れていた企業のニーズ発掘であり、そこでの武器が各種センサーを利用したIoTと、大量データの価値を最大限に引き出すための分析技術の活用だ。

 例えば段ボールや紙器メーカー大手の日本トーカンパッケージは昨秋、KDDIの支援を受け、生産ラインのモーターに各種センサーを取り付けることで、障害の予兆検出が可能な環境を実現。部品交換などの事前対応により、ライン停止に伴う損失発生を格段に抑えられるようになった。

 「異常の兆候は潤滑油への異物混入に伴う負荷電圧の増加や発熱、振動の発生など、さまざまな形で表れます。我々はPoCや過去の導入経験からそれらのモデル化に成功しており、日本トーカンパッケージではセンサーデータをクラウド上に収集し可視化することで、本社でもラインの異常をいち早く検知できるようになりました。さらに、AIを含むデータ分析技術の活用による判断の自動化/高度化も視野に入れています」(石井氏)

 システム全体の一貫提供が可能な企業であることもKDDIの提案活動での大きな強みになっている。取扱商品も幅広く、センサーだけで2000種以上も取りそろえる。

 一方で、アクセンチュアと協働でデータ分析を専門に行う「ARISE analytics」を、野村総合研究所とはIoTを含めたデジタルトランスフォーメーション専門のコンサルティング会社「KDDIデジタルデザイン」を合弁で設立するなど、データ分析やIoT活用の高度化に向けても余念がない。今後は総合力を生かし、工場での安全・安心の確保など、IoTの新たな用途開拓を推し進めるという。

多様な用件を満たすIoT向け通信サービス

 デジタル革新に向けたIoT活用が今後、さらに加速することに疑念を挟む余地はない。その処理基盤と位置付けられるのが各種センサーとの場所を問わない通信を可能にした無線通信サービスだ。だが、その選定は決して簡単ではない。背景にはIoTならではの次のような要件がある。

 まず挙げられるのが、業務利用が可能なほど低料金であることだ。また、IoT導入が本格化する中、迅速な立ち上げのためには契約から利用までの期間はできる限り短い方が望ましい。さらに、センサーが増えるほど利用契約も増え、その管理の手間を削減するための仕組みも必要となる。加えて、貴重なデータを安全に収集するための高いセキュリティや、データを処理する各種システムやクラウドなどとの高い親和性も欠かせない。

 これら要件のすべてを高いレベルで満たすIoT向けサービス――その代表格が9000を超えるユーザーへの導入実績を誇るソラコムの無線通信プラットフォーム「SORACOM」である。

 SORACOMは携帯電話やLPWA(Low Power Wide Area)などを使ったIoT向け無線通信サービス「SORACOM Air」と、IoTシステム構築のために同社が合わせて提供する回線管理やデバイス設定/管理、セキュリティ、システム/クラウド連携などの11機能をサービスとして提供している。

 ソラコムの執行役員でセールスディレクターを務める柿島英和氏は、「SORACOM Airの利用料は、基本料が1回線当たり10円/日、通信量が0.2円/MBからと極めて低額。しかも、ウェブコンソールで発注すると、早ければ翌日にはSIMカードが届き、後はウェブコンソールの到着ボタンを押すだけで利用開始できます。そのため、まずは試用し、成果を見つつ拡大させる“スモールスタート”にも適しているのです」と力を込める。

多様なニーズを支える、多数の機能群

 柿島氏はSORACOMの各機能について導入事例を交えつつ紹介した。最初に取り上げたのは、SORACOM上で通信仕様を変換したり、認証などを付与したりすることでデバイス側の処理負荷を軽減する「SORACOM Beam」である。ひいては電池の持ちが良くなる点が評価され、電動車いすや除雪車など、メンテナンスを頻繁には行いにくい機器の管理用途などで「地味に利用が伸びている」(柿島氏)という。

ソラコム 執行役員 セールスディレクターの柿島英和氏 ソラコム 執行役員 セールスディレクターの柿島英和氏

 SORACOMと企業システムを専用線で結ぶのが「SORACOM Canal/Direct/Door」である。このうちCanalはAWS上のシステムを対象とし、「30分ほどで閉域環境のシステムを立ち上げられる」(柿島氏)のが魅力。とある商業施設は顧客向けのポイント付与キャンペーン端末を同環境で運用し、安全かつ確実なポイント付与に役立てている。また、DirectとDoorは、AWS以外のクラウドやシステムを専用線とVPNを用いてそれぞれ接続する。

 「SORACOM Gate」はデバイスにグローバルIPアドレスを割り振り、リモートアクセスによる各デバイスの制御を実現する。グローバルIPアドレスには第三者からの不正アクセスの恐れがあるが、「V-LANを構成してプライベートIPアドレスを割り振ることで抜本的な対応を図った」(柿島氏)。例えば、IHIはガスタービンを納品した顧客の管理用パソコンへのアクセス環境をSORACOM Gateで整え遠隔からの運用支援業務に活用している。

 SORACOM側でデータ収集や蓄積、確認、グラフ作成などを行うために用意したのが「SORACOM Harvest」である。インフラを自前で用意せずとも40日間分のデータを保管でき、各種ツールによるグラフなどの可視化も簡単に行える。

 これらの説明の後、柿島氏は次のように述べてセッションを締めくくった。

 「当社は多様なパートナーとの協業を通じた、IoTのエコシステムの形成に注力しています。目指すのは、「あらゆるヒトとモノがつながる」社会です。われわれはそのために顧客のフィードバックから、必要なサービスを今後も拡充し続けます。当社のプラットフォームを上手に使い、新たな社会と未来を切り開いてもらえれば幸いです」

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提供:KDDI株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2018年4月25日

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