アトラシアン日本法人社長が語る、日本ならではのワークスタイル変革法「本質はWork from everywhere」

今、新たなワークスタイルで仕事の効率を上げていくことが求められている。日本のワークスタイル変革のカギとなるのは? あるべきチームの形とは?――プロジェクト管理や情報共有ツールを全世界に提供するアトラシアン日本法人のスチュアート・ハリントン社長に聞いた。

» 2017年04月03日 10時00分 公開
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 日本は長らく「先進諸国の中で労働生産性が低い」と言われてきた。安倍内閣が主導で進める「働き方改革実現会議」でも、生産性の向上は大きなテーマとして扱われている。長時間労働をやめ、新たなワークスタイルで仕事の効率を上げていくことが求められているが、どうすればいいのかわからず戸惑っているビジネスパーソンも多いのではないだろうか。

 そんなワークスタイル変革の一助となるのが、アトラシアンが提供するプロジェクト管理や情報共有のツールだ。アトラシアンは全世界で6.8万社以上の顧客をもち、日本でも年々導入企業が増えている。

 2013年からこのアトラシアン日本法人の代表取締役社長を務めるスチュアート・ハリントン氏は、スタンフォード大学、慶應義塾大学で研究に従事した後、日本企業や外資系企業で役員を務めてきた。日本企業や海外企業の文化、そして働き方に精通しているハリントン社長の考える、日本のワークスタイル変革のカギと、新たなチームの形とは。

スチュアート・ハリントン社長に、日本のワークスタイル変革のカギとなる「新たなチームの形」を聞いた

「Work from everywhere」がワークスタイル変革の本質

――ハリントン社長は、日本の生産性の低さは何が原因だとお考えでしょうか。

 ホワイトカラーの生産性でいうと、日本企業は会議が多いことが大きな原因だと考えています。私は1980年代から日本で働いてきましたが、土曜日は丸1日役員会議に充てるなど、とにかく会議が多く、長時間かかることが気になっていたのです。しかも内容はブレインストーミングなどではなく、資料に書いてあることを読み上げるだけ。報告のための会議です。これは本当に必要なのでしょうか?

――会議の資料を作成するのにも、たくさんの時間が費やされています。

 全くナンセンスですよね。弊社の製品にも「Confluence」というチームで情報共有するためのツールがありますが、そういったツールで会議までにミーティングの議事録やアジェンダ、プロジェクトの進捗を共有しておけば、報告はそこで完了します。さらに、議題についてみんなでコメントを書き込むことで、ディスカッションすらページ上で終わる可能性がある。会議そのものを開かなくて済むのです。そうすれば、1日あたり何時間かセーブできますよね。その時間を他の創造的な仕事にまわすことができます。

 また、メールの数の多さも、生産性を下げている1つの要因です。メールの執筆とチェックは意外と時間がとられるもの。CCに入っているメールが大量に届くという状態は、大変非効率的です。重要度も判別できないので、読まなくていいと思っていたメールに大事な情報が書かれている……なんてことも。情報共有ツールを使えば、そんな事態も防げます。

情報共有ツール「Confluence」

――会議の問題でいうと、ワーキングマザーは夕方からの会議に参加できないため、担当できる仕事が限られると聞いたことがあります。

 子どもを育てながら時短で働く、というのはワークスタイルの1つですよね。情報共有やディスカッションのやり方が変われば、ワークスタイルも変わるんですよ。日本で言うワークスタイルの議論は主に「在宅勤務を導入するかどうか」。でも、本質的な問題は「家かオフィスか」ではありません。場所や時間、デバイスに縛られず、どこでもいつでも効率よく働ける――「Work from everywhere」。そういう環境を実現することが、本当のワークスタイル変革ではないでしょうか。

 例えば、情報共有ツールにコメントを書くことで、アイデアをブラッシュアップしていけるのであれば、その作業は電車を待つ間にもできます。チャットツールのビデオ通話機能を使えば、離れたところにいてもミーティングができます。仕事のタスクを共有し、管理するツールを使えば、直接席まで行って仕事を依頼しなくても、「これをやっておいてほしい」というリクエストをツール上で依頼することもできます。実際弊社では、本社のあるシドニー、サンフランシスコ、アムステルダム、日本など世界中24時間体制で様々なプロジェクトを進めることができているんですよ。

――グローバル化にも対応できる。

 はい。8時間の時差がある国の社員と会議をするとなると、どちらかが夜遅く、もしくは朝早くに対応しなければいけません。グローバル化を進めようとするならば、必然的に会議は最低限になるでしょうね。さらに、弊社のツールを使えば、プロジェクトの進捗状況をタスクボードで可視化できるので、サンフランシスコでこの作業とこの作業が終わっているから、次は日本では今日中にこの作業を終わらせよう……と、効率的に進行することができます。

失敗から得られるナレッジは、会社の財産

――「誰が何をどこまでやったのか」が共有されているわけですね。……それはもしかしたら、抵抗を感じる社員がいるかもしれません。

 サボっていることもバレてしまいますからね(笑)。でも、その人が担当している作業の難易度が高く、手がかかるために進んでいないのかもしれない。そういう場合は、人員を増やす、技術力の高い人についてもらう、など対応ができます。進んでいないことが共有されていないことのほうが大問題なのです。こうした「ガラス張り」が受け入れられるかどうかは、企業カルチャーにもよるでしょうが、私は成功も失敗も全てナレッジとして共有することが、生産性を上げるカギだと考えています。

――失敗は共有せずに、隠しておきたいと考える人は多そうです。

 100%の失敗というものはないんですよ。必ず、そこから学びがある。例えば、イベントを開催したけれど目標としていた人数の半分しか来なかったとします。それはそこだけ見れば失敗です。しかし、それはなぜだったのかを考えれば、次に生かすことができます。そうしてためたナレッジは会社の財産。共有しない手はありません。

 「失敗を共有しにくい」という気持ちの根底には、日本の「失敗は許されない」という文化があるように思います。日本では起業して、その会社を倒産させてしまった人には、ほとんどの銀行が融資をしません。でもシリコンバレーでは、「倒産して、そこから君は何を学んだのか」と聞かれる。そしてその答えが的確であればまたチャンスが与えられるのです。弊社の採用もそうです。これまでの成功例と失敗例を面接で聞くようにしています。そこで、「自分は失敗したことはありません」と答える人は、まだ経験が浅いんだなと判断します。

――むしろ、失敗しているほうがプラスだと捉えるんですね。

 「ナレッジが蓄積されている」ということですからね。起業だけでなく、社内のプロジェクトでも失敗を許すことが、さらなる成功を生むのだと思います。

 これは、アジャイルと呼ばれるソフトウェアの開発手法と共通しています。プロジェクト全体の要求定義や概要設計を最初におこない、作業工程を1つずつ終わらせて次へ進むウォータフォール型と違い、アジャイル型では、機能ごとに短期間で計画、設計、実装などの工程を進め、順次リリースしていきます。

 何億円もかけ、何年もかけて開発したものが、思った効果を発揮しなかったということになったら目も当てられません。加えて、あまりに規模が大きいために誰も途中で方向修正ができない、というのが最悪です。アジャイル型で、少しのお金を投資して、やってみて、成功したらもっと投資する。失敗したらやり方を変える。ウェブで言うA/Bテストのようなものですね。それを繰り返していったほうが、正しい方向に進むことができます。これはソフトウェア開発だけでなく、ビジネスのプロジェクト全般に応用できると考えています。

竹を少しずつ曲げるように、企業の体質を変えていく

――確かに、失敗が許されない文化によって、効率性が落ちていることは他にもありそうです。新しいことを始める際に、前例がないと許可が降りない、など。

 そこはシリコンバレーの文化と大きく違いますね。シリコンバレーでは「一番乗りになりたい」「人と同じなんてつまらない!」と考えている人が多い。だから、前例なんてむしろないほうがいい(笑)。でも、日本では新しい製品を導入するときも、「他にどの会社が使っているのか」「日本での事例はあるのか」ということを聞く方が多いという印象です。

 あと、これも日本特有の文化だと思うのですが、先輩・後輩や役職といった上下関係を気にする人は多いですよね。節度を守ることは必要ですが、上司がコメントした後に異論を書き込むのはためらわれる、などと考えていたら建設的なディスカッションは進みません。役職や年次の上下にかかわらず、自由に議論ができる環境を整えることが、共有ツールをさらに生かすことにつながると思います。

――日本の企業文化からすると、アトラシアンのツールを導入するのはハードルが高いのでは?

 そんなことはありません。弊社のツールは、チームでいかに効率的に、最大の成果を出すかということにフォーカスして開発されています。トヨタの「かんばん方式」を参考にした機能もありますし、主力製品の「JIRA」は「ゴジラ」から名前をとっているんです。日本の考え方や技術を参考にしているところがいくつもあります。

ソフトウェア開発ツール「JIRA」の名前は「ゴジラ」から生まれている

 とはいえ、一気に導入すると拒否反応が出るというのも分かります。私は、日本の大企業は竹のようなものだと考えているんです。竹はゆっくり力をかければ自由自在に形がつくれる。でも、いきなり曲げるとバキッと折れてしまう。竹にゆっくり力をかけるように、企業のなかでも1つの部署やサークルなど小さなところから導入してほしい。そうすると、「柔軟な働き方もいいね」「情報共有すると効率化が進むね」とその有用性を実感していただけるはず。そこから、少しずつ広めていければいいなと。時間はかかりますが、鉄ではなく竹だと信じているので、いずれはどんな企業にも導入が可能だと考えています。

――ありがとうございます。最後に、ハリントン社長の考える、日本企業ならではの強みを教えてください。

 日本の企業、そしてビジネスパーソンは、チームで成果を出すことに向いていると思います。アメリカという国はカリスマは生まれやすいかもしれませんが、その人が生み出した技術を応用して量産したりするのは得意ではありません。日本は、1つのアイデアや技術を磨いてさらにいいものにしていくことに長けている。それは、自動車やカメラ、半導体などの製品を見ていても思います。組織を大事にして、一丸となって1つの方向に向かっていくことができるのが、日本のビジネスパーソンです。だから、方向性さえ間違わなければ、かつての日本企業のような勢いのある企業が出てくるでしょう。

 正しい方向に進み、新しいチームになるためには、ガラス張りの情報共有、自由闊達なディスカッション、縦割りではなく横につながるコミュニケーションが必要になってくる。そこに、我々のツールが寄与できると考えています。

 私は、日本の古い企業の体質を変え、ワークスタイルを変革し、日本経済を盛り上げたいと思ってアトラシアンに入りました。生産性への注目が高まっている今、よりよい議論がなされることを期待しています。

チームの進化形

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提供:アトラシアン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2017年7月24日

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